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スペシャルインタビュー

16 時間前
読了時間: 9分

現代彫刻家・橋本敦史 [第2回]

“自然と人を繋ぐ”アーティストは、可視化される“生命と宇宙の共鳴”を目指す


2023年のインタビューから3年。現代彫刻家・橋本敦史は、中国・深圳に続いて広東省佛山市に大型モニュメントを完成させ、深圳では8作品による個展を開催した。

また、岡山の創志学園高等学校には、未来を担う若者たちへの願いを込めた「FLOWER」が置かれた。

「自然と人間」という変わらぬテーマを、異なる土地と空間の中で育ててきた年月。そしていま橋本は、身体のミクロコスモス、大宇宙のマクロコスモスの2つの代表的シリーズの先にある新たな造形を見つめている。


それは、「可視化される生命と宇宙の共鳴」である。


26年年末または27年年明けで、東京銀座の老舗画廊「吉井画廊」での個展が決定。現代彫刻家・橋本敦史は、次なるステージに挑戦し、さらなる飛躍を目指す。


スペシャルインタビュー[第2回]は、注目を集める現代彫刻家・橋本敦史に、ここ3年間の軌跡と現在地、そして目標として定める「可視化される生命と宇宙の共鳴」について語ってもらった。

(聞き手:21世紀メディカル研究所代表 阪田英也 元にっけいあーと副編集長。



4メートルの彫刻が水面に浮かぶ――中国・佛山での新たな挑戦

 

―2023年の第1回インタビューから3年が経ちました。この間に制作された大きな作品、中国・広東省佛山市に設置された「SHINING FOREVER TOGETHER」についてお聞かせください。

 

橋本:2023年ごろから現地のパブリックアート制作会社「A art」と打ち合わせを重ね、2025年に完成した大型作品です。基本となる形は、深圳の「THE SUN & THE MOON」とつながっています。

僕がデッサンを示し、現地の制作チームが設計や強度計算を行いました。僕の『こうしたい』という要望と、構造上可能なことを何度も擦り合わせながら進めました。

 

―「SHINING FOREVER TOGETHER」は、高級住宅を核とする新しい街区のエントランスに設置されていますね。浅く水を張った空間に作品が映り込み、周囲を人が歩ける印象的な場所です。

 

橋本:佛山は広州に隣接し、いま大規模な都市開発が進んでいる地域です。働くこと、住むこと、日々の暮らしが1つの街の中で完結するような開発で、その一角にあるマンションのエントランスに置かれました。

現地で初めて作品を見た時は感動しました。高さ約4メートルで、自分1人の身体や制作能力を超えた大きさです。自分のデッサンから生まれた作品が、周囲の建築や水面を含む空間全体と響き合っている。それが本当に嬉しかったです。



―深圳の作品と似たフォルムを持ちながら、表面の表情が大きく異なります。

 

橋本:深圳の作品は、ステンレスを鏡のように磨いた鏡面仕上げでした。佛山では、制作途中の磨き跡を見たクライアントが、『磨き跡の残る状態のほうがいい』と評価したんです。

最初は僕も迷いましたが、実際に試作してみると面白い。そこで磨き跡を生かし、陰影のある表面に仕上げました。完全な鏡面とは違う落ち着きが生まれ、周囲の風景にも自然に溶け込んだと思います。クライアントの発見と意見を受け入れることで、同じ系譜の作品がもう一段進化しました。



―佛山の「SHINING FOREVER TOGETHER」完成後には、深圳の「THE SUN & THE MOON」も再訪されたそうですね。

 

橋本:はい。屋外彫刻は風雨にさらされますから、時間がたつと汚れ、みすぼらしくなってしまうことがあります。ところが深圳の作品は、完成当時と変わらないほどきれいに保たれていました。A artが継続してメンテナンスしてくれていたんです。

作品に愛情を持って接し、『つくって終わり』にしないでいてくれる。それにとても感動しました。作品が遠い国で大切に生き続けていることは、作家にとって何より嬉しいことです。

 

8作品でつくる一つの世界――深圳「朗朗音楽世界」での個展

 

―2026年5月には、深圳の文化施設「朗朗音楽世界(Lang Lang Music World)」で個展「知覚とイメージ」が開催されました。

 

橋本:世界的なピアニスト、ラン・ランさんの名を冠した文化施設で、その中のギャラリーに8点を出展しました。当初は2025年夏の開催予定でしたが、日中関係などの影響もあって延期され、ようやく開催に至りました。作品は日本で制作して送り、平面図を見ながら配置を指示しました。


個展「知覚とイメージ」会場風景


―展覧会全体には、どのようなコンセプトを込めたのでしょうか。

 

橋本:僕の最も大きなテーマは、「自然と人間」です。人間の身体、その外側にある自然、そして両者の中を流れる時間。その関係をギャラリー空間の中につくり出したいと考えました。これまで別々に制作してきた作品を一つの場所に集めることで、僕が考えてきた世界をまとまった形で提示できたと思います。

 

―橋本さんの代表作である「THE SUN & THE MOON」と「FLOWER」が、一つの空間で向き合いっています。

 

橋本:「MOON」や「THE SUN & THE MOON」は、太陽や月、自然の力と、そこに流れる時間を表現しています。一方、「FLOWER」の原点は、人間の脳内にあるシナプスです。神経細胞のつながりを小さな宇宙のように捉え、人間の根源を形にしています。 

つまり、「FLOWER」は人間であり、太陽や月は人間を取り巻く自然です。両者が互いに影響を与えながら同じ世界に共存する。その世界観を会場全体で表現しようとしました。

 

―今回の「THE SUN & THE MOON」には、従来作にはない『地層』の表現も加わりました。

 

橋本:側面の黒い部分を層状にし、地層をイメージしました。地層には長い時間の経過が刻まれています。化石を含む地層のように、目には見えない時間を形として残したかった。車を運転している時に山を見たことがきっかけだったのか、ふと『地層』が浮かび、帰宅してすぐにデッサンしました。既存のフォルムの中に新しい時間の表現を加えた作品です。


 

未来を担う若者、高校生へ ~創志学園高校に置かれた「FLOWER」


―この3年の間、もう1つの節目が、岡山市の創志学園高等学校への「FLOWER」の設置です。どのような経緯で実現したのですか。

 

橋本:京都のホテル「丸福楼」に設置された僕の「FLOWER」を、創志学園の関係者がご覧になり、気に入ってくださったことがきっかけです。丸福楼は任天堂の旧本社社屋を活用したホテルで、安藤忠雄先生が設計監修をされています。創志学園グループが運営するIPU・環太平洋大学にも安藤先生設計の校舎が複数あり、そうしたご縁がつながって話が進みました。


創志学園高等学校に設置された「FLOWER」/校内での設置風景


―作品は、校舎に入ってすぐの、人の行き交う場所にあります。

 

橋本:「FLOWER」には、つぼみのように閉じた形から、次第に大きく開いていく形まで、いくつかの段階があります。学校に置いたのは、これから開いていく途中の形です。高校生は、まさにこれから自分の可能性を花開かせていく存在ですから、『いまから咲くんだ』というメッセージにふさわしいと思いました。完成しきった花ではなく、未来へ向かう“発展途上の花”なのです。

 

―橋本さんが提案された資料には、生徒たちへ送る言葉として、『想像力と創造力』

『想像力と感性』というメッセージが記されています。

 

橋本:抽象作品には、1つだけの“解”はありません。「何に見えるか」、「何を感じるか」は、見る人によって違います。だからこそ、柔らかな感性を持つ高校生に、作品を前に自由に想像してほしい。そこから自分なりの創造につなげてほしいと思っています。

毎日その場所を通る中で、ある日、作品の見え方が変わることもあるでしょう。そういう体験を重ねてもらえたら嬉しいです。

 

「可視化される生命と宇宙の共鳴」を目指して

 

―前回第1回のインタビュー以降、橋本さんは、「THE SUN & THE MOON」と「FLOWER」という2つのシリーズを集中的に展開してきました。今後の取組みと展望についてはいかがですか。

 

橋本:この2つは、これまで作ってきた中でも特に好きなシリーズです。佛山の大型作品や深圳での個展を経て、1つの節目を迎え、同時にこのシリーズの“集大成”になったという感覚があります。もちろん、これからも2つのシリーズを深めていきたい。 

そして今は、『次の形を模索したい』、『可視化したい』という気持ちが、とても強くなっています。

 

―作品の根幹である『自然と人間』というテーマ自体も変わっていくのでしょうか。

 

橋本:大きなテーマは変わりません。自然と人間の関係、自分自身が経験したこと、身体や生命への関心は、僕が作品をつくる源です。その根は残したまま、フォルムや素材、表現の仕方において、これまでとは違う新しいシリーズを生み出したいと思っています。目標は、「可視化される生命と宇宙の共鳴」です。

 

―新しいフォルムは、机に向かって考え抜く中から生まれるのでしょうか。

 

橋本:僕の場合は、ひらめきです。机に座って『考えよう』としても、なかなか浮かびません。車を運転している時や、全く別のことをしている時に突然浮かび、それを机の上に持ち帰ってデッサンする。作品を作っている途中に、形を見ながら『ここはこうした方がいい』と思いつくこともあります。だから、いつひらめいてもいいように、常にアンテナを張っていたい。

 

―創作において、最も大切な助言者は誰でしょう。

 

橋本:父と母です。脳神経外科医である父とは、生命や身体、自然と人間といったコンセプトについて話します。僕自身が病気を経験し、『自分の頭の中はどうなっているのだろう』と考えたことから生まれた作品もあります。父との対話を通して、それらが僕の大きなテーマの一部なのだと気づきました。

母とは、形やバランス、見た目についてよく話します。率直に、『こちらの方がいい』、『これはあまり良くない』と言ってくれる。時にはけんかのようになりますが、作家にとって本音で批評してくれる人は貴重です。父はコンセプト、母はフォルム。2人との対話が、僕の制作を支えています。

 

―中国で2つの大型作品を完成させ、海外で個展を開き、学校という次世代の学びの場にも作品が置かれました。次に目指すステージと挑戦についてはいかがですか。

 

橋本:前回もお話ししたように、まずは『続けること』です。芸術家にとって、続けることが一番難しい。歩みを止めず、その上で、これまでとは違う新しい形を生み出したい。そして、日本、とりわけ東京でも個展を実現し、より多くの人に作品を直接見てもらいたい。 「自然と人間」はどのようにつながり、共存していけるのか。変わらない問いを抱えながら、次の表現へ進んでいきます。

 26年年末または27年年明けには、東京銀座の老舗画廊「吉井画廊」での個展開催が決まりました。これまでの個展は、関西圏で開催されましたが、東京では初めてです。多くの方々にご来場いただき、リアルに僕の作品を見ていただきたい。

 そしてそこでの出会いが、次のステージと僕の新たな挑戦を生む原動力になると考えています。




作品動画:「SHINING FOREVER TOGETHER」


(了)

 
 
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