スペシャル対談
- 4月22日
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更新日:4月28日
総合メディカルグループ株式会社代表取締役社長
多田荘一郎氏 対談 第1回
医師・医療機関と患者を対象とした総合メディカルグループの多岐にわたる事業展開とその将来をテーマに、同社社長の多田荘一郎氏と各々の事業と深く関りを持つアカデミアの先生に対談していただく3回シリーズのスペシャル対談です。アカデミアからは同社へのアドバイスをいただき、多田社長からは産業界からの医療イノベーションを提案、産学で考える日本の医療の課題とその解決策、将来像を語っていただきました。
シリーズ第1回は、奈良医科大学名誉教授、日本循環器協会副代表理事、そして前奈良県西和医療センター総長(現市立奈良病院 循環器内科顧問)の斎藤能彦先生をお招きしました。

総合メディカルグループ社長 多田荘一郎氏対談第1回
第1回のお客様 斎藤能彦先生
奈良医科大学名誉教授 日本循環器協会副代表理事
前奈良県西和医療センター総長(現市立奈良病院 循環器内科顧問)
総合メディカルグループの薬剤師・薬局事務スタッフを“循環器病の伝道師”として育成。患者さんや地域住民の方々に循環器病の正しい知識を啓発し、健康寿命延伸をサポート
循環器病克服と健康長寿を目標に掲げる日本循環器協会では、一般の国民を対象に循環器病の正しい理解を啓発する“循環器病の伝道師”育成を目標として、2024年、「循環器病アドバイザー制度」を開始しました。日本循環器協会の副代表理事で、奈良県西和医療センター総長(現市立奈良病院 循環器内科顧問)の斎藤能彦先生は、この「循環器病アドバイザー制度」創設と運営を指揮されています。一方、総合メディカルグループでは、この制度の趣旨に賛同し、同社が運営する全国のそうごう薬局グループの薬剤師・薬局事務スタッフが中心となって、「循環器病アドバイザー」資格を取得(2026年2月現在362名)しています。
総合メディカルグループ株式会社代表取締役社長 多田荘一郎氏対談第1回は、斎藤能彦先生をお招きして、分かりにくい病気である循環器病をどのように啓発していくか。また、「循環器病アドバイザー」資格を取得した総合メディカルグループ社員が地域社会でどのような活動を展開しているかをテーマにお話しいただきました。(構成:21世紀メディカル研究所 阪田英也)
循環器病克服に向けた産学連携の取り組み
多田 斎藤先生とは、2015年に発足した「これからの循環器医療を考える会」でご一緒して以来、アカデミアと産業界それぞれの立場から、循環器医療の将来について議論を重ねてきました。
斎藤 そうですね。もう10年以上のお付き合いになります。この間、「これからの循環器医療を考える会」では、日本循環器学会と日本脳卒中学会が共同で発表した「循環器病克服5カ年計画」の策定に関与し、「循環器病対策基本法」(2018年12月)の成立に貢献しました。
多田 そして2021年5月には、循環器病の広報・啓発を担う組織である「日本循環器協会」を小室一成先生とご一緒に立ち上げられました。さらに2024年には、循環器病の正しい理解を啓発する「循環器病アドバイザー制度」を創設され、第1期生として1万7,000名を超える方々を認定されています。

斎藤 心臓や血管の病気に脳卒中を含む循環器病は、がんに続いて死亡原因の第2位です。75歳以上の高齢者では、がんを抑えて第1位であり、ひとたび発症すると完全には治りにくい病気です。一般に“分かりにくい病気”である循環器病の正しい知識を習得して、循環器病の“伝道師”として啓発に当たる。これが「循環器病アドバイザー」です。
多田 私も創設当初から日本循環器協会の理事として参画していますが、当社としてもその趣旨に強く共感し、全国のそうごう薬局グループの薬剤師・薬局事務スタッフを中心に「循環器病アドバイザー」資格の取得を進めています。2026年2月現在で362名が資格を取得しています。また、資格取得後は薬局を拠点に地域住民の方々を対象とした健康相談会や健康チェックなどを実施し、循環器病の正しい知識を伝える活動を進めています。薬局は日常生活の中で患者さんと接点を持てる場所ですので、地域の中で循環器病の理解を広げる役割を果たしていければと考えています。
斎藤 素晴らしい取り組みですね。循環器病は複雑で対症療法が多いため、難しい病気です。しかし、原因療法とも捉えられる方法としては「予防」があると思います。私が産業界に期待しているのは、悪い生活習慣が原因で起きる循環器病の「予防」に、新たな革新を提供していただくことです。つまり、一般の人や患者さんの「行動変容」を起こす技術を開発していただき、エビデンスを蓄積していただきたいと考えています。
多田 私は学生時代、行動経済学を専攻しており、「ナッジ理論」で知られるノーベル賞受賞者リチャード・セイラー先生の研究室で学びました。循環器病の「行動変容」を考えるときに難しいのは、多くの人が必ずしも「健康のためだけに生きているわけではない」という点だと思います。本来は健康であることが人生の幸福につながるのですが、人はどうしても目の前の便利さや快適さを優先してしまう。行動経済学では、現在の利益を過大評価する 「現在バイアス」や、慣れた行動を続けてしまう「ヒューリスティック」が知られています。循環器病の多くは、運動、減塩、禁煙など生活習慣の改善が重要になりますが、こうした人間の意思決定の特性を考えると、個人の努力だけに委ねるのは難しい。循環器病は医療機関だけで完結する病気ではなく、日常生活の中で向き合っていく病気です。だからこそ、生活習慣の改善が自然に選ばれるような仕組み、いわば行動を後押しする社会的なデザインが重要になるのではないかと思います。

専門性の高い「循環器病エキスパートアドバイザー(EA)」を創出
斎藤 日本循環器協会では、昨年2025年10月から「循環器病アドバイザー」の上位資格である「循環器病エキスパートアドバイザー(EA)」の育成に取り組んでいます。EAは、薬剤師さんや医療従事者と関わりがある方を対象として、特に薬剤師さんの場合は薬局窓口や電話で、循環器病で薬物療法を受けている方に対する指導を行います。より専門的な知識を持って、循環器病のリスクのある患者さんに対応していく、これがEAの役割です。「循環器病アドバイザー」が 循環器病の“伝道師”として、より多くの国民との接点を持っていただく“量”の戦略だとすると、EAは専門家としての“質”を追求する戦略として位置づけています。
多田 当社では、社員の中で循環器病に関する共通理解を高める必要性を感じていました。薬剤師や薬局事務スタッフは日常的に患者さんと接する立場にありますので、「循環器病アドバイザー制度」で体系的に学ぶことにより、知識の向上だけでなく、患者さんへの説明や理解もより深まると期待しています。
そして、斎藤先生のおっしゃる啓発の“量”と“質”の両面を高めていくという考え方には、私も強く共感しています。
当社は、薬局や在宅医療など地域医療に深く関わる社員が多い企業ですので、より専門性の高い対応ができる人材の育成という観点から。EA資格の取得についても前向きに取り組んでいきたいと考えています。

斎藤 先進的な取り組みをされていることを感謝いたします。循環器病に限らず、医療全体について言えることですが、これからは、人類の幸福のような、誰もが認めるゴールを医学界と産業界で再認識することが重要になると思います。直近の目標として「アウトカムを何にするべきか」などを議論し、産学で納得するゴールを目指していくことが、最終的には患者さんのため、ひいては人類の幸福につながると考えます。例えば、患者さんの医療について、その方の「人生評価の見える化」を産業界とともに取り組んで行くべき課題の一つと、個人的には考えています。
多田 企業の立場から見ると、今後の医療では「多種職連携」、「多施設連携」、「データ連携」の3つの連携が重要なテーマになると考えています。そして現在のような個々の経験に基づく「エピソードベース」から、客観的なデータに基づく「エビデンスベース」の医療へ、どのように発展させていくかも重要です。循環器病における多職種連携や「多施設連携の取り組みが、医療経済やQOLといったアウトカムとして可視化され、それをアカデミアが科学的に評価していく枠組みが整えば、企業の参画もより一層進んでいくのではないかと考えています。
第1回おわり。多田荘一郎氏対談 第2回に続く




