

CyberOncologyを電子カルテのプラットフォームに
――現在の電子カルテの抱える問題について引き続きお聞きします。連載第1回で、松本先生は、「基本マスターのようなものを国がしっかり主導し、ベンダーに配布していれば、もっと話は早かった」と語られています。 松本:確かに現在は、電子カルテの診療情報(RWD:リアルワールドデータ)の核となるプラットフォームが不在の状況といえます。私はこのプラットフォームを「基本マスター」と考えており、本来はどのベンダーの電子カルテでも、そこに書かれているRWDを収集してストックできることが大切です。しかしご承知の通りベンダーの壁があり叶いません。 第1回でも述べたように、私はCyberOncologyのコンセプトが近い将来、デファクトスタンダード、グローバルスタンダードになればと考えています。それは、電子カルテのRWDのプラットフォームとしてCyberOncologyのコンセプトが認められ実臨床に浸透していくということです。現在はがん領域のプラットフォームであるCyberOncologyですが、循環器領域でCyberCirculation、新興感染症に対応するCyberCovid-19など他の疾患においても柔軟にRWDが収集出来るように適応したプラットフォームとなる。このことが電子カルテの診療情報が利用出来ないという永年の課題解決に結びついていくのだと思います。
CyberOncologyバージョンアップの意味
――そのCyberOncologyですが、7月1日にバージョンアップしたことが報告されました(PRiME-Rニュースリリース)。この概要について教えていただけますか。

松本:第1回でも述べましたが、最近、電子カルテを中心としたリアルワールドデータ(RWD)を医学研究、医薬品・医療機器等の臨床開発に利活用しエビデンスを創出することが注目されています。しかし、電子カルテは人が読むことを基本としてフリーテキスト中心で、多くのデータは構造化されずに文章などで記載・保存され、マイニング技術は進歩していますが、現状では解析に利用することは困難な状況です。 CyberOncologyは、電子カルテにおけるがん薬物治療に関するデータを標準化/構造化してデータベース化することを目的に開発され、すでに全国の医療機関へ提供してきました。今回のCyberOncologyのバージョンアップは、RWDのさらなる利活用を支援することを目標としています。具体的には、臨床研究等の研究基盤として利活用する際の実用性やデータ入力の利便性を向上させました。
――新バージョンの主な特長をお聞かせください。
松本:新バージョンは2021年7月1日より提供開始で、2つの特長を持っています。 1番目は、腫瘍学の様々な解析に対応するために入力項目を拡充しし、同時に入力項目のカスタマイズに要する期間を短縮して実用性を向上させたこと。2番目は、電子カルテへの構造化入力を進展させ、入力支援機能を拡大して利便性を向上させたことです。 1番目について詳しく説明すると、新たな入力項目(TNM分類、併存症、既往歴等)を追加し、疫学やアウトカム研究に必要なより詳細なデータを収集することが可能となりました。腫瘍学は日進月歩ですが、腫瘍学に関する基本的情報はCyberOncologyから収集し解析に必要な新たな知見は追加して利用することが出来ます。また、CyberOncologyのプラットフォームを刷新したことによって、利用者の要望に応じた入力項目のカスタマイズに要する期間を大幅に短縮し、電子カルテの対応機種を拡大しました。 このバージョンアップによって、臨床研究においてタイムリーかつ柔軟なカスタマイズが可能となり、より実用的な研究基盤としての利活用が可能となりました。
CyberOncology画面イメージ(がん種等の入力画面)
