21世紀 メディカルAIフォーラム 第12回会議が、5月10日(火)14:00~16:00に開催されました。今回は、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学 専攻基礎神経医学講座 教授 岩坪威先生が「アルツハイマー病の早期診断・治療法開発の現状」、東京大学大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 基礎神経医学講座 助教 佐藤謙一郎先生が「AI, 機械学習を用いたアルツハイマー病理予測アルゴリズムの応用」のタイトルで講演されました。(21世紀メディカル研究所 主任研究員 渡辺幸輔)
講演1番目の岩坪氏は、「アルツハイマー病の早期診断・治療法開発の現状」と題して、1.アルツハイマー病の病態と治療薬 2.臨床的進行と病理学的進行 3.新規治療薬Aducanumab 4.J-TRC研究について 5.まとめの順に講演されました。この中で、アルツハイマー病の治療法開発には、分子イメージングやバイオマーカーを用いて、リスクの高い患者を絞り込んで、治験を行なっていくことの必要性が語られました。
アルツハイマー病は、アミロイドの蓄積が始まり、MCIと評価されるまでの期間「プレクリニカル期AD」が存在し、治療薬の効果の評価には、この期間の病理学的変化を精密に測定することが必須であることが明らかになっています。
J-TRC研究は、Web上での認知機能テストや血液バイオマーカーによるスクリーニングを導入することで、認知症でない高齢ボランティアから治験に即応できるコホートの構築を実現し、アルツハイマー病のメカニズムに働きかける疾患修飾薬の臨床実用の期待を高めています。
2番目の講演の佐藤氏による「AI, 機械学習を用いたアルツハイマー病理予測アルゴリズムの応用」は、1.機械学習による予測に取り組む背景 2.意義と予想される効果 3.方法の
詳細 4.適用の効果 5.暫定的評価の順で進められました。
佐藤氏は、ウェブの情報からプレクリニカル期ADの患者をピックアップできる仕組みを構築し、「参加者の招集が困難」、「研究資源の効率化が要求される」といった、プレクリニカル期ADに対する臨床研究の課題の克服に寄与しています。
Web登録という性質を持つJ-TRCは、取得できる項目数が少なく、先行研究でよく用いられる検査項目がほぼ使用できないという制約に触れながら、AI・機械学習での予測モデルを実用する上でのノウハウを語られました。
次回は、6月24日(金)15:00~17:20、21世紀 メディカルAIシンポジウムが開催されます。新たに木村芳孝先生、川上英良先生のお二人が新座長として就任され、我が国のメディカルAIの現状と課題、その展望をテーマとした議論のナビゲーターを務めていただきます。
Comments